高橋克典の“法律 だいすきになーれ+ひとり言α”

・・・・・ まずは“宅建資格”から

借地借家法−7条から8条をみてみよう・・・。

今回は、前回の続きです。

第2話、更新した期間のときに、建物が滅失したときの論点です。

当初とどう違うのでしょうか。更新ですから、建ててから4、50年経って、建物が朽ち果てることもありますね。もう十分使ってきたからです。そうすると、借地権者としては、もう土地を返してもいいや、と思うでしょう。一方、地主も十分地代をもらったから、そろそろ返してほしいな、と思うでしょう。

こういう利益状況をうまく料理しているのが、8条なんです。やはり、当初と違うんです。

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(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)

第八条  契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

2  前項に規定する場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

3  前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から三月を経過することによって消滅する。

4  第一項に規定する地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利は、第二項に規定する地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利を制限する場合に限り、制限することができる。

5  転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第二項の規定を適用する。
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ざーっと、眺めると、1項は「借地権者側から」終了したい、2項は「地主から」終了したい、3項は「実際いつ終了」するか、4項は「制限する特約をしたときの論点」、5項は、転借地権のパターンです。

4項がいまいちイメージがすぐにわかないでしょうか。でも、それ以外が分かればすぐに理解できます。

まずは、1項からです。更新後には、もう借地権者は再築しないことも多いので、あと残存期間まで地代を支払いたくない、なら今の時点で支払わなくてもいいようにしたい。地主ももう十分もらったのだから、解約の申し入れを一方的にできることにしてもよく、それを可能にしたものです。

覚えるときのポイントは、たとえ事前に中途解約特約をしていなくても、できる点ですね。

では、再築する場合はどうかです。再築するときに、地主の承諾があれば、7条で処理すればいいのでした。
2項が問題となるときには、更新で、承諾がない場合です。この場合、借地権者は十分土地を使ってきたのですから、また新築を建てて、何十年間土地が返ってこないのは我慢ならん、ということになるでしょう。
だから、地主の方から、承諾を与えていないのですから、一方的に終了する権利を認めました。

ちなみに、当初ならこの規定の適用がないのですから、地主から一方的に追い出されることはなく、残存期間後に更新の論点になったのですね。
そして、当初なら地主に無断で再築もできることになるわけです。

ただし、地主の承諾を得られないときには、地主の方から終了させるようにできるのですが、みなさんはこう思いませんでした。それは、「本当は承諾を出してもいいのだが、地主が意地悪して、わざと承諾しないこともあるのではないか」と。
そんなことはしない?、いやいや人間、複雑なんです。そういうこともあるでしょう。そこで、このような意地悪もあるかもしれないとして、18条の規定をおきました。

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(借地契約の更新後の建物の再築の許可)

第十八条  契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず、借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第七条第一項の規定による期間と異なる期間を定め、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

2  裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

3  前条第五項及び第六項の規定は、第一項の裁判をする場合に準用する。

  ※17条5項−転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第一項から第三項までの裁判をすることができる。
   6項−裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項から第三項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
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また、また、これも長い規定です。ねばり強く読めましたか。
3項は、とりあえず解説はいらないですね。2項も、総合的に考慮せよ、ですから、いわれなくてもそうするよ、とすればこれも問題ないですね。

要は、1項だけを丁寧に押さえましょう。
ポイントは、「更新後」「地主がいじわるしても」「申立をすれば」「代諾許可」をしてあげる、ということですね。この承諾もないと、借地権者は土地から追い出されるのですし、その場合には折角建てた建物の買取も請求できません・・。

以上から、更新後の再築は、地主の承諾もない、この規定の代諾の許可もない、ならば8条2項で、地主は一方的に終了させることができるわけです。

試験にはでないと思いますが、この4項の制限の特約ですが、「借地権者の地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利」を制限するときには、「地主の地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利」も制限しないと認められないというものです。借地権者の方だけだと、不公平ですからね。

どうでしょうか。
まとめると、当初の場合か、更新の場合か、再築する場合か、しない場合か。さらには、再築するときには承諾ある場合かない場合か、に場合分けして、ルールができているわけです。あ、場合分けするのに慣れてきましたか、えっおもしろい、、そうですか、そうなってきましたか。

それならよかった。

今回は2回に分けて、講義しました。

お疲れ様でした。

では、また。

2016年版うかるぞ宅建士 直前予想問(模試4回分) (うかるぞ宅建士シリーズ)
高橋克典
週刊住宅新聞社


試験にうかる!!法律のカンタン思考術―宅建受験生必携
高橋 克典
住宅新報社

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