高橋克典の“法律 だいすきになーれ+ひとり言α”

・・・・・ まずは“宅建資格”から

借地借家法−7条から8条をみてみよう・・・。

今回は、借地で最も難解な箇所を学習しましょう。

どういう状況での紛争かですが、土地を使用している期間中に起きる問題です。

つまり、建物を使用中に、建物が火事とか、台風とかで、全部滅失したときの論点です。このとき、まず借地権は、当然終了しません。

実は、賃貸借は、賃借物が全部滅失すると当然終了します。これについて、条文はないのですが、判例がこのようなルールを提示しています。なぜか、もし、存続すると、賃貸人賃借人の互いの債務が残り、例えば建物を借りているなら、賃貸人は早く建てて使用収益させる義務を果たさないといけないし(過酷になります)、賃借人も毎月賃料を支払う義務が残るからです(使っていないのに)。つまり、これを認めては、お互い不幸になるだけです。

もちろん、条文が全くないわけでしゃないので、それを見てみましょう。

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(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)

第六百十一条  賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。

2  前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
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これは、一部ですから、残りの部分は使えることがありますね。全部滅失は、もう使えません。ですから、その滅失が賃借人の過失があろうとなかろうと、解除するということなく、直ちに終了を認めた方がいい、という解釈になりませんか。

では、土地を建物所有のために借りた借地権者は、使っている途中で建物が全部滅失した場合、どうなるかですが、以上から借地権は当然終了しませんね。

建物は賃借物ではないからです。ここから、建物の賃貸借つまり借家権の場合と違ってくるのです。だから、まだ残りの期間、土地を使えるんです。

そこで、その事故が当初の期間中でおきたのか、更新した後に起きたのか、利益状況が異なってきますから、差をもうけているんです。それは、7条、8条(更新のときのもの)から、そう分析できます。

では、いろいろその立場に立って考えていくといいでしょう。それらを前提として、条文はできているからです。

まず、借地権者の立場では、新築して建物を折角建てたのに、すぐに火事で燃えてしまった、まだ30年近く土地を借りられるんだよなあ、火災保険金も入ってきたのだし、もう一度再築したいな、とこの場合なら思います。また、期間満了近くなら、もう十分土地を使ったのだから、土地を返してもいいや、残りの期間の地代を払わず返したいな、ということになりますね。

そうすると、当初の場合には、再築するのを原則とみて、再築しないのを例外としましょうか。

一方、借地権設定者からすると、思い切って自分の土地を30年近く貸す決心をしたのでから、最低30年は使ってもらわないとまずい。この地代で、ほかの投資の資金にしようと思っていたんだから・・・。

だから、借地権設定者は、当初の場合には途中で一方的に借地権者から帰したいというのは、勘弁してほしいということになりますね。

どうでしょうか。

そこで、再築したときから考えていくのですが、その分析として、その再築を地主が承諾したか否かで、さらに分けるのが7条です。

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(建物の再築による借地権の期間の延長)

第七条  借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から二十年間存続する。ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。

2  借地権者が借地権設定者に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後二月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者の承諾があったものとみなす。ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第十八条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。

3  転借地権が設定されている場合においては、転借地権者がする建物の築造を借地権者がする建物の築造とみなして、借地権者と借地権設定者との間について第一項の規定を適用する。

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これも長いですが、3項は、転借地権バージョンですから、本体の1項と同じですね。1項が中心です。

1項では、承諾があれば、たとえ残存期間が20年未満しかなくても、20年に延ばしてくれるというおまけが付きます。これも、借地権者にとっては、非常に保護される規定となっていますね。すぐに更新の問題がこないことが安心して土地を借りていられるからです。

これを含めて借地権者が保護される規定、3つ覚えました。きちんと指摘できますか。まず契約の更新、次に建物買取請求で、それにここです。

あと、2項からも、いろいろ分析できるようにしておきましょう。これは、「建てるよ」との通知を出したとき、それには3パターンの対応の仕方がありますね。いやだ、いいよ、無視です。

前2者ははっきりしていていいとして、最後の場合でも、当初の期間の場合では、承諾とみなされます(みなし承諾)。ここで、覚えてほしいのは、そうか、2項から、1項は更新後の期間において、再築した場合も、承諾があれば20年延びるのだな、しかし、みなし承諾の点はないので、通知して無視されたら承諾がなかった扱いになるのか、ということなのです。

では、もう一つ論点があり、承諾がなかったときにはどうなるのか、です。

この場合には、従来の期間の残存期間となり、期間満了がくれば、既に勉強した更新の論点になります。

ここでは、正当事由のチェックのときに、承諾なく再築したという点が、借地権者に不利に働くかも知れません。そうなると、終了する確率が高くなります。
もちろん、この場合にでも、買取請求ができます。

そのときに思い出すが、13条2項なんです。

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(建物買取請求権)

十三条  借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

2  前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
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どうですか。2項は、どういう場合だったか、条文を読んでいくときに、具体的にシチュエーションがでてきますね。これでよくイメージできたでしょうか。

期限の猶予とは、先延ばしにしてくれるということです。メリットとして、一つは、ほぼ新築であり高い代金となっているはずだから、すぐに払えないこともあるからです。あとは、敷地は早く帰してほしいので、代金を払わなくても同時履行の抗弁権で敷地の拒否はできないことになります。

だいぶ長く説明してきましたが、まだ飽きていませんね。え、ぐったりですか。

もう少し我慢してください。

当初で、再築した場合の論点をみてきましたが、もう一つ論点がありました。それは、再築しない場合です。

この場合、合意で終了させることはできるでしょう。お互い納得しているし、それは借地権者が土地を使わないので地代を払いたくないと思っているし、地主ももう地代が入らなくてもいいとしているわけですからね。

問題は、借地権者が一方的に解約できるのか、です。これは期間を定めたわけですから、中途解約の特約がないとできないことになっています。これは、借地借家法には規定がないので、民法の適用をします。前にも扱いました。思い出しましたか。

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(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)

第六百十八条  当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

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ここでは、地主の期間満了まで地代を取れる権利、一方的に奪われない権利も十分保護してあげないといけないからです。ですから、中途解約特約をあらかじめ定めていないなら、借地権者は土地を使っていませんが、期間満了まで地代を支払い、その後建物がないのですから請求更新等もなく、合意もしないので、結局終了となりますね。

ここまでで、第1話でした。
では、また。

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高橋克典
週刊住宅新聞社


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高橋 克典
住宅新報社

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